Researches
Photon Counting Detector
Concept of Novel Diagnosis
現在,臨床で用いられているX線画像は,医師が目で見て診断をしています.つまり,画像の形態情報と医師の生物学的な知識によって診断していることになります(右側:従来手法).
一方で,X線撮影は放射線物理の理論に基づいた被写体中のX線の減弱を画像化したものです.すなわち,画像の形成過程は物理学によって説明可能です.
ここで,一つのアイデアがわきます.放射線物理学的なX線の減弱理論を解析することで,物理学ベースの医用画像を作ることはできないのでしょうか?この発想が我々の原点です.
関連出版物
Algorithm for Generating Effective Atomic Number, Soft-Tissue, and Bone Images Based on Analysis Using an Energy-Resolving Photon-Counting Detector
Natsumi KIMOTO, Hiroaki HAYASHI, Cheonghae LEE, Tatsuya MAEDA, Akitoshi KATSUMATA
Advanced X-Ray Radiation Detection: Medical Imaging and Industrial Applications (edited by Kris Iniewski), Chapter 4, pp.75-106, Springer, 2022
ISBN:978-3-030-92988-6
Effective Atomic Number
X線画像にコントラストが着く理由は,X線が透過した臓器の原子番号や密度が異なるからです.人体の構成元素は大別してZ~6.5の軟組織系とZ~13の硬組織に分かれますが,新しい診断手法では軟組織の微妙な差を例えば被写体の構成原子の実効原子番号の差として検出できないかと考えています.
X線は被写体中で減弱しますが,この減弱量のエネルギー依存性に実効原子番号の情報が隠れています.これらを上手く引き出すことで実効原子番号ベースで被写体の情報をイメージングしたいと考えています.
関連出版物
Algorithm for Generating Effective Atomic Number, Soft-Tissue, and Bone Images Based on Analysis Using an Energy-Resolving Photon-Counting Detector
Natsumi KIMOTO, Hiroaki HAYASHI, Cheonghae LEE, Tatsuya MAEDA, Akitoshi KATSUMATA
Advanced X-Ray Radiation Detection: Medical Imaging and Industrial Applications (edited by Kris Iniewski), Chapter 4, pp.75-106, Springer, 2022
ISBN:978-3-030-92988-6
What's X-ray photograph?
X線写真の本質を考察するために,上のような絵を用意して見ました.
左図に示したように,可視光の影絵は手の輪郭の情報しか持っておらず,あまり医療には使えません.
一方で右に示すX線写真では,X線が被写体に入射した際に完全には吸収されず,一部のX線が透過するという現象が起こります.従来法では,この透過画像を見て人体内部を非破壊・非侵襲的に診断しているわけですが,透過画像中に被写体の原子番号の情報が隠されていますので,新手法ではそれらをうまく引き出すということにチャレンジしています.
What's the true ability of X-rays?
X線の減弱量を解析することが,新しい診断装置の開発につながることを示すコンセプトを描いてみました.
X線の透過画像を単なる影絵として見るのではなく,減弱量を物理学的に解析を行う事で,多くの情報を引き出せます.
「X線の真の能力を引き出す」というキーワードで意欲的に研究をしたいと思っています.
What's X-ray Photograph?
可視光の写真とX線の写真を比べると本質が見えてきます.可視光の写真は,以下のような物理で得られます. 太陽から放出された可視光は被写体で散乱されますが,レンズにちょうどよい角度で入射した光のみを集めて画像化することで意味のある画像を作っています. ポイントは,レンズによって像を上下左右逆転させていることです.可視光が屈折するという現象を使う事で,小さなセンサーで大きな風景を見ることができる点はユニークです.
一方でX線写真では,X線を曲げることが難しいために等倍撮影が基本になります.
関連出版物
Photon Counting Detectors for X-ray Imaging: Physics and Applications
Hiroaki HAYASHI, Natsumi KIMOTO, Takashi ASAHARA, Takumi ASAKAWA, Cheonghae LEE, Akitoshi KATSUMATA
Chapter 1-5, pp.1-119, Springer, 2021
ISBN:978-3-030-62679-2
Traditional X-ray Diagnosis
X線画像をどのように診断をしているのかをデモンストレーションして見ましょう.X線画像を撮る実験体系は図(a)に示した通りですが,この情報は従来型の画像診断手法では必ずしも必要にはなりません.
(b)の画像を見た時に,多くの人は「ハサミ」と即答できますが,不思議に思いませんか?一方で(c)画像が何であるかを言い当てることは難しく,「本物のライターと玩具のライターですよ」と答えを聞かされてもピンとこないと思います.
この実験で説明したかったことは,「現在のX線写真は,観察者の脳裏にある被写体を連想させるための元情報(イマジネーション)を使って診断しており,X線撮影時の物理を使っているわけではない」という事でした.イメージがしやすいハサミを言い当てることができた理由です.
関連出版物
Photon Counting Detectors for X-ray Imaging: Physics and Applications
Hiroaki HAYASHI, Natsumi KIMOTO, Takashi ASAHARA, Takumi ASAKAWA, Cheonghae LEE, Akitoshi KATSUMATA
Chapter 1-5, pp.1-119, Springer, 2021
ISBN:978-3-030-62679-2
Quantitative Imaging: DEXA
被写体の定量情報を引き出す解析は,現在の臨床でも用いられています.最も有名なアプリケーションは,デュアルエネルギー(DE)法で,2種類のエネルギーの異なるX線を使って分析をする方法です.病院では骨密度測定に応用されています.
この方法の利点は,定量的な分析を行えることです.欠点は,2種類の異なるエネルギーを放出するための特殊なX線撮影装置を必要とすることです.
我々は,このDE法の欠点を克服する新しい技術:フォトンカウンティング法の基礎研究を行っています.
Concept of ERPCD
左図は,従来手法であるエネルギー積分型検出器(Energy Integrating Detector: EID)を用いた画像化手法の概念図を示しています.検出器の1画素に入射した数多のX線のエネルギー和に相当する信号値を,白黒のカラースケールに当てはめて画像化しています.
右図は,我々が開発を行っているエネルギー分解型フォトンカウンティング検出器(Energy Resolving Photon Counting Detector: ERPCD)の概念図です.検出器に入射した光子1個1個を即時解析し,エネルギー弁別を行った後にエネルギー毎に計数値を画像化します.得られる画像にエネルギー情報が含まれていることが特徴です.
X-ray Attenuations
フォトンカウンティング技術を用いて光子の減弱量の分析し,元素の情報,すなわち実効原子番号を引き出さなければいけません.
被写体でのX線の減弱情報は,被写体の組成(原子番号)と質量厚さ(密度×厚み)に強く依存する量なので,減弱情報だけの分析では被写体の組成の情報を引き出せません.
精度よく分析を行うために,異なるエネルギーに対して被写体の減弱情報を実測し,減弱量の比を取ります.この解析によって,被写体の実効原子番号に強く依存する物理量を得ることができます.
関連出版物
Photon Counting Detectors for X-ray Imaging: Physics and Applications
Hiroaki HAYASHI, Natsumi KIMOTO, Takashi ASAHARA, Takumi ASAKAWA, Cheonghae LEE, Akitoshi KATSUMATA
Chapter 1-5, pp.1-119, Springer, 2021
ISBN:978-3-030-62679-2
X-ray Attenuations
「X線の減弱情報を分析することで被写体の組成情報(実効原子番号)を引き出せる」ことを証明するために,X線スペクトロメータを用いた実験を行ってアルゴリズムの開発を行いました.
この研究の遂行過程で,被写体の透過時にX線の実効エネルギーがわずかに変化するビームハードニング現象が大きな影響を与えることに気が付きました.
関連出版物
Precise material identification method based on a photon counting technique with correction of the beam hardening effect in X-ray spectra
Kimoto Natsumi, Hiroaki Hayashi, Asahara Takashi, Mihara Yoshiki, Yuki Kanazawa, Tsutomu Yamakawa, Shuichiro Yamamoto, Masashi Yamasaki and Masahiro Okada
Applied Radiation and Isotopes, Vol.124, pp.16-26, 2017
DOI:10.1016/j.apradiso.2017.01.049
Detector Response
フォトンカウンティング検出器の研究を初めて最初の大きな飛躍は,検出器の応答特性を丁寧に再現しなければいけないという事実に気が付いたことです.
この画像にあるように,検出器に入射したX線は100%吸収されるわけではなく,検出器内で散乱される過程を含みます.すなわち,全てのイベントが全吸収されるわけではありません.
原子核計測の分野では応答関数として一般的に知られていますが,医療分野の画像検出器でこの影響を考慮した研究はほとんどありませんでした.我々は早期にこの事実に気が付き,基礎研究を行いました.世界的な波及効果も高く,下記の本の表紙にもなりました.
関連出版物
Response function of two-dimensional CdTe detector
Hiroaki HAYASHI
Semiconductor Radiation Detectors, Technology, and Applications 1st edition : edited by Salim Reza, Chapter 4 (pp.85-108), CRC press, 2017
ISBN:9781138710344
Zeff
株式会社ジョブとの共同研究で,ERPCDの試作機を用いて画像データを取得することができました.この画像を解析するために,アルゴリズムに更なる修正を加えました.
論文の図面のテイストも変わってきて,他分野の論文の流行などを取り入れて,洒落た図面を書くように努力しました.まだまだ分野内の認知度は低いですが,地道にコツコツと努力しようと思います.
関連出版物
Effective atomic number image determination with an energy-resolving photon-counting detector using polychromatic X-ray attenuation by correcting for the beam hardening effect and detector response
Natsumi Kimoto, Hiroaki Hayashi, Takumi Asakawa, Cheonghae Lee, Takashi Asahara, Tatsuya Maeda, Sota Goto, Yuki Kanazawa, Akitoshi Katsumata, Shuichiro Yamamoto, Masahiro Okada
Applied Radiation and Isotopes, 170, 109617(14 pages), 2021
DOI:10.1016/j.apradiso.2021.109617
Novel Algorithm
実効原子番号の算出アルゴリズムを公表した論文では,ビームハードニング現象と検出器の応答特性を同時に補正しつつ,正しい実効原子番号を推定するアルゴリズムを組むことができました.
Bone & Soft-Tissue Images
Zeffの算出アルゴリズムは,さらに進化させることができることに気が付きました.それは骨と軟組織の分離です.
DEXA技術で似たようなことはできるのですが,製品のアルゴリズムはブラックボックス化されていることもあり,必ずしも周知されていません.一方で,X線の減弱の理論は単純明快なので,この理論を上手く使えるように実験データを補正すれば,物理学の理論に従った解析が可能になります.
関連出版物
A novel algorithm for extracting soft-tissue and bone images measured using a photon-counting type X-ray imaging detector with the help of effective atomic number analysis
Natsumi KIMOTO, Hiroaki HAYASHI, Cheonghae LEE, Tatsuya MAEDA, Miku ANDO, Yuki KANAZAWA, Akitoshi KATSUMATA, Shuichiro YAMAMOTO, Masahiro OKADA
Applied Radiation and Isotopes, 176, 109822(12 pages), 2021
DOI:10.1016/j.apradiso.2021.109822
Importance of BH Correction
Zeffの算出アルゴリズムでもビームハードニング補正と検出器の応答関数の補正が重要でしたが,骨と軟組織の弁別画像でもこれらの補正が重要になります.
関連出版物
Algorithm for Generating Effective Atomic Number, Soft-Tissue, and Bone Images Based on Analysis Using an Energy-Resolving Photon-Counting Detector
Natsumi KIMOTO, Hiroaki HAYASHI, Cheonghae LEE, Tatsuya MAEDA, Akitoshi KATSUMATA
Advanced X-Ray Radiation Detection: Medical Imaging and Industrial Applications (edited by Kris Iniewski), Chapter 4, pp.75-106, Springer, 2022
ISBN:978-3-030-92988-6
Importance of BH Correction
現在公表しているアルゴリズムでは,①実効原子番号,②軟組織量,③骨組織量に加えて従来画像も出力可能です.まだ人体への適用は行っていませんが,食品サンプルなどを用いた実証実験の結果は非常に良好です.
関連出版物
Algorithm for Generating Effective Atomic Number, Soft-Tissue, and Bone Images Based on Analysis Using an Energy-Resolving Photon-Counting Detector
Natsumi KIMOTO, Hiroaki HAYASHI, Cheonghae LEE, Tatsuya MAEDA, Akitoshi KATSUMATA
Advanced X-Ray Radiation Detection: Medical Imaging and Industrial Applications (edited by Kris Iniewski), Chapter 4, pp.75-106, Springer, 2022
ISBN:978-3-030-92988-6
Blurring Correction
フォトンカウンティングを用いたイメージングを行う際に画像のボケを補正する事の重要性に気が付き,新しい補正アルゴリズムを考案しました.
関連出版物
A Blurring Correction Method Suitable to Analyze Quantitative X-ray Images Derived from Energy-Resolving Photon Counting Detector
Daiki Kobayashi, Hiroaki Hayashi, Rina Nishigami, Tatsuya Maeda, Takashi Asahara, Yuki Kanazawa, Akitoshi Katsumata, Natsumi Kimoto, Shuichiro Yamamoto
Physics in Medicine and Biology, 69, 075023, 2024
DOI:10.1088/1361-6560/ad3119
ForensicDentistry
フォトンカウンティングを用いた定量イメージングの臨床応用を提案するために,歯科法医学分野での新しいご遺体識別法の提案をしました.
関連出版物
Helpfulness of effective atomic number image in forensic dental identification: photon-counting computed tomography is suitable
Takashi ASAHARA, Shunsuke OKADA, Hiroaki HAYASHI, Tatsuya MAEDA, Rina NISHIGAMI, Daiki KOBAYASHI, Chihiro KUROSE, Natsumi KIMOTO, Sota GOTO, Maki HISATOMI, Yoshinobu YANAGI, Toshihiro IGUCHI
Computers in Biology and Medicine, 2024
DOI:10.1016/j.compbiomed.2024.109333